クレジットカード延滞率 米国は過去最高圏へ|最新データ・上昇の理由・日本への影響を徹底解説

2024〜2025年にかけて米国のクレジットカード延滞率はコロナ禍後の最低水準から大きく反転し、多くの指標でマルチイヤー高値を更新しています。本記事では、最新統計とその背景、今後のリスク、日本の家計・投資への影響までをわかりやすく解説します。

なぜ今「米国クレジットカード延滞率」が重要なのか

クレジットカードの延滞率という指標を聞いて、ピンとこない方も多いかもしれません。しかし、この数字は米国経済の健全性を測る重要なバロメーターの一つなのです。

2024〜2025年にかけて、米国のクレジットカード延滞率はコロナ禍直後の最低水準から大きく反転し、「リーマンショック後以来の高水準」に迫っています。その背景には、物価高・高金利・低所得層への負担集中、そして「限度額ギリギリまでカードを使う層」の急増という構造変化があります。

日本から見ると一見”他人事”に見えますが、延滞率の上昇は「米国景気の減速リスク」「金融システムのストレス」「株式・不動産市場への影響」のシグナルとなり得ます。この記事では、最新データと公的統計を用いて米国のクレジットカード延滞率を整理し、その上昇要因と日本への示唆を深掘りします。

この記事を読めば、米国経済の現状と日本への影響、そして個人として取るべき対策が見えてくるはずです。


1. 米国のクレジットカード延滞率は今どうなっているのか

1.1 延滞率とは何か?「30日・60日・90日延滞」の違い

クレジットカードの延滞率を理解する前に、まず「延滞」の定義について整理しましょう。

クレジットカードの延滞率は、期日までに支払いが行われなかった残高の割合を示す指標で、多くの統計では「30日以上延滞」「90日以上延滞」などの区分で公表されています。

延滞の分類と意味

延滞期間分類意味
30日以上初期延滞支払いが1ヶ月以上遅れている状態
60日以上中期延滞支払いが2ヶ月以上遅れている状態
90日以上深刻な延滞将来的に貸倒(チャージオフ)につながる可能性が高い

一般に、30日超の延滞は「初期延滞」、90日超の延滞は「深刻な延滞」とされ、90日以上延滞は将来的に貸倒(チャージオフ)につながる可能性が高いとみなされます。

延滞率には大きく二つの見方があります。

  • 残高ベース:延滞となっているカード残高の割合(例:全残高の何%が30日以上延滞か)
  • 人ベース:延滞状態にあるカード保有者の割合(例:カード保有者の何%が90日以上延滞か)

政策議論や景気判断では、「残高ベースの延滞率」と「人ベースの延滞人口比率」が併せて見られています。

1.2 2024〜2025年時点の最新延滞率(全体像)

それでは、現在の米国クレジットカード延滞率は具体的にどのような水準にあるのでしょうか。

米連邦準備制度理事会(FRB)の統計を集約したデータによると、**2024年10月時点で「全米商業銀行のクレジットカードローン延滞率(残高ベース)」は約3.2%**で、2021年の歴史的低水準(約1.5%)から倍増しています。

同じ系列では、2009年初めに約6.6%というピークを付けており、現状は「リーマン期ピークの半分弱だが、コロナ前(2019年)の水準を明確に上回る」レベルです。

ニューヨーク連銀の「Household Debt and Credit Report」では、2024年〜2025年にかけてクレジットカード延滞への遷移率(正常→延滞)が全世代で上昇し、「延滞率はパンデミック前の水準を上回った」と報告されています。

主要指標の現状

指標最新値コロナ禍時特徴
FRB統計(残高ベース)約3.2%(2024年10月)約1.5%(2021年)倍増、コロナ前を上回る
ニューヨーク連銀約6.9%が延滞入り(2025年Q2)歴史的低水準パンデミック前を上回る高水準

同レポートでは、2025年第2四半期時点で約6.9%のクレジットカード残高が過去1年の間に延滞入りしており、「カード延滞は高水準が続いている」とコメントされています。

1.3 2010年以降の推移と「コロナ前」との比較

延滞率の現在地を理解するには、過去の推移を見ることが重要です。

2010年代前半、クレジットカード延滞率は金融危機後の調整局面で徐々に低下し、2019年には2%台前半と比較的落ち着いた水準にありました。

ところが、2020〜2021年のコロナ禍では、政府の現金給付やローン返済猶予措置などの影響で延滞率が異例の低水準(1.5%前後)まで急低下し、「過去最低」を記録しています。

その後、2021年後半から延滞率は上昇トレンドに転じ、FRBの分析によれば「2023年第1四半期までに延滞率はコロナ前水準に戻り、その後も約1.2〜1.3%ポイント分上乗せされている」とされています。

セントルイス連銀は2025年5月時点のブログで、現在のクレジットカード延滞率(残高ベース)は、2008年の世界金融危機期に見られた水準に近づきつつあり、延滞状態にある人の割合はすでに当時を上回っていると指摘しています。

延滞率の歴史的推移

  • 2010年代前半:金融危機後の調整で徐々に低下
  • 2019年:2%台前半の安定水準
  • 2020-2021年:コロナ禍で1.5%前後の過去最低を記録
  • 2021年後半~:上昇トレンドに転換
  • 2024-2025年:2008年金融危機期に接近

2. 延滞率上昇の背景:何が米国消費者を追い込んでいるのか

2.1 インフレと金利上昇による家計負担の増大

延滞率上昇の最大の要因は、2021年以降の高インフレと2022年以降の急速な利上げです。

NPRや経済メディアは、生活必需品価格と住宅関連コストの上昇が低所得層の家計を直撃し、「クレジットカード頼みの生活」が増えた結果、延滞が増加していると報じています。

クレジットカード金利自体も上昇しており、FRBの統計では平均的なカード金利はパンデミック前より数ポイント高い水準に達しています。

高金利下ではリボ払い・残高の繰り越しが急速に重くのしかかり、「返すために借りる」状態に陥りやすくなるため、延滞率の上昇につながりやすい構造です。

家計を圧迫する主な要因

  1. 物価上昇:生活必需品や住宅コストの高騰
  2. 金利上昇:FRBの急速な利上げによるカード金利の上昇
  3. 実質所得の低下:賃金上昇が物価上昇に追いつかない
  4. 貯蓄の減少:コロナ禍の給付金効果が消失

2.2 「最貧層ZIPコード」でより顕著な延滞率上昇

延滞率の上昇は、すべての所得層で均等に起きているわけではありません。セントルイス連銀の詳細な分析により、低所得層への集中が明らかになっています。

セントルイス連銀の分析は、全米を所得水準別のZIPコードに区分し、延滞率の変化を比較しています。この分析によれば、2021年第2四半期から2025年第1四半期にかけて、30日以上延滞の割合は最貧10%のZIPコードで約63%、最富裕10%のZIPコードで約44%増加しており、低所得地域でより顕著な悪化が見られます

所得階層別の延滞率増加

所得階層30日以上延滞の増加率90日以上延滞の状況
最貧10%地域+63%12.6%→20.1%(約59%増)
最富裕10%地域+44%4.1%→7.3%(約80%増)

同じく90日以上の深刻な延滞率でも、最富裕層エリアでは4.1%から7.3%へ約80%増加、最貧層エリアでは12.6%から20.1%へ約59%増加しており、「もともと延滞水準が高い上に、さらに悪化している」ことが分かります。このように、延滞率の上昇は全体的な現象であると同時に、「もともと脆弱だった層をさらに追い込んでいる」という側面があります。

2.3 「限度額ギリギリ利用(maxed-out)」層に集中するリスク

延滞率上昇のもう一つの重要な特徴は、特定の利用パターンを持つ層への集中です。

ニューヨーク連銀のブログ「Delinquency Is Increasingly in the Cards for Maxed-Out Borrowers」は、「限度額の90%以上を利用している”maxed-out”層」が延滞増加の主役になっていると分析しています。

maxed-out層の特徴

  • カード保有者全体の約18〜20%程度
  • 延滞残高の約3分の1を占める
  • パンデミック前は延滞残高の4分の1未満だった
  • リスクがこの層に集中してきている

同レポートでは、こうしたmaxed-out層の延滞率がコロナ前より大幅に悪化している一方で、利用率の低い層(利用残高が与信枠の20%未満など)は比較的健全に推移していると指摘されています。つまり、平均値だけを見ると「そこそこの悪化」に見えても、実態は「一部の過剰債務層にリスクが集中している」状態といえます。


3. データで見る:延滞率の最新統計とセグメント別の特徴

3.1 全米平均の延滞率とカード残高の推移

延滞率を理解するには、クレジットカード残高全体の動向も併せて見る必要があります。

主要指標の現状

指標主なソース最新状況
クレジットカード残高(全米)ニューヨーク連銀「Household Debt and Credit」約1.2兆ドル(2025年Q2)、過去最高圏
延滞率(商業銀行、残高ベース)FRB・Trading Economics約3.2%(2024年10月)、2019年より高く2009年ピークの約半分
30日+延滞シェア(人ベース)セントルイス連銀2021年以降、全地域・全所得階層で上昇、GFC期に近づく水準
90日+深刻延滞シェア(人ベース)セントルイス連銀延滞者の割合は2008年危機時を上回ったとの指摘

ニューヨーク連銀のレポートとCNBCなどの報道によれば、2025年時点でクレジットカード残高は約1.21兆ドルと、前年の過去最高水準とほぼ同水準まで積み上がっています。同時に、過去1年で延滞入りした残高比率は約6.9%に達しており、連銀研究者は「延滞率は高止まりしており、一部の家計は過度に借り過ぎている可能性がある」とコメントしています。

3.2 低所得層 vs 高所得層:どちらの延滞率が速く悪化しているか

セントルイス連銀の分析は、ZIPコードを所得水準別に分けたうえで、30日・90日延滞の相対的な増加率を比較しています。

先ほど触れた通り、30日延滞の相対増加率は最貧10%のエリアで+63%、最富裕10%で+44%と、両者とも大きく悪化しているものの、最貧層の方がやや大きい伸びとなっています。

興味深いのは90日延滞のデータです。**最富裕層エリアで+80%、最貧層エリアで+59%**と、むしろ富裕層エリアの悪化ペースが大きいという結果が出ています。

所得階層別の延滞率変化の特徴

  • 最貧層:もともと延滞水準が高く、さらに悪化
  • 最富裕層:相対的な伸び率が大きく、無視できない悪化
  • 共通点:全所得階層で延滞率が上昇している

これは、「もともと延滞水準が高いのは低所得層だが、ここ数年の伸び率だけを見ると高所得層でも無視できない悪化が起きている」ことを示しています。

3.3 若年層・サブプライム層の延滞率

年齢や信用スコアによる違いも重要なポイントです。

ニューヨーク連銀の家計債務レポートは、年齢別・信用スコア別の延滞動向にも言及しています。2024年〜2025年のデータでは、若年層(35歳以下)やサブプライム層(信用スコアが低い層)で、クレジットカードおよびオートローンの延滞率が特に大きく上昇していると報告されています。

NPRおよびニューヨーク連銀のコメントによると、「35歳以下では、他の年齢層と比べて延滞率の上昇が際立っており、インフレと高金利の環境で若年層の家計がより脆弱である」ことが強調されています。

延滞リスクの高い層

  1. 若年層(35歳以下):他の年齢層より延滞率の上昇が顕著
  2. サブプライム層:信用スコアが低く、延滞率が継続上昇
  3. maxed-out層:限度額の90%以上を利用している層

また、Equifaxなどのクレジットビューローも、サブプライム層を中心に延滞率の上昇が続いていると指摘しており、高リスク層への与信拡大が延滞悪化の一因となっている可能性が示唆されています。


4. 延滞率上昇が意味するもの:景気・金融システムへのリスク

4.1 消費鈍化と景気減速リスク

クレジットカード延滞率の上昇は、単なる統計上の数字ではありません。それは「家計の支払い余力が削られつつある」ことを示す重要なシグナルです。

FRBの分析は、延滞率の上昇が消費支出に与える影響を定量化しようとしており、高金利とインフレの影響で実質的な可処分所得が圧迫されている世帯では、消費の減速が先行して現れる可能性を指摘しています。

NPRや経済メディアも、「多くの世帯はまだ健全だが、一部の世帯ではカード延滞が生活苦のサインとなっており、これが積み重なればマクロの消費に影を落とし得る」とコメントしています。

延滞率上昇が示唆すること

  • 家計の支払い余力の低下
  • 将来的な個人消費の減速可能性
  • マクロ経済への影響(米国GDPの約7割が個人消費)
  • 景気減速の早期警鐘

特に、家計消費がGDPの約7割を占める米国では、延滞率上昇が続けば、将来の景気減速リスクを早期に示すストレス指標となりやすい構造です。

4.2 リーマンショック時との比較:どこまで危ないのか

多くの人が気になるのは、「現在の状況はリーマンショック時とどれくらい似ているのか」という点でしょう。

セントルイス連銀の2025年のレポートは、「クレジットカード延滞率は2008年の世界金融危機期に見られた水準に接近しており、延滞状態にある人の割合は当時を上回っている」と述べています。

Statistaが整理したFRB系列のデータでも、「2024年のクレジットカード延滞率は2008年以来の高水準」とされており、チャージオフ率も金融危機以来の高さに達しています。

リーマンショック時との比較

項目リーマンショック時(2008-2009)現在(2024-2025)
延滞率水準ピーク約6.6%約3.2%(接近中)
雇用環境大幅悪化比較的堅調
延滞者割合高水準当時を上回る
システミックリスク極めて高い現時点では限定的

一方で、FRBの「Predicting Credit Card Delinquency Rates」は、観測されている延滞率の上昇はモデルが予測する範囲内であり、「過去数年の上昇は主にリスクの高い借り手への与信拡大と実質債務の増加によって説明できる」と分析しています。このレポートは、「モデルが説明できない”異常な悪化”は現時点では限定的であり、ただちにシステミックな危機を示すとは言えない」としつつも、「それが今後も続く保証はない」と注意喚起しています。

4.3 銀行・カード会社の健全性と規制動向(延滞手数料規制など)

クレジットカード延滞率の上昇は、銀行・カード会社の収益にも直接影響を与えます。

FICOの業界ベンチマークやEquifaxのレポートによると、2024〜2025年にかけてカードのチャージオフ率(貸倒率)も上昇しており、カード発行会社は与信基準の厳格化や金利引き上げで対応しているとされています。

金融機関の対応

  • 与信基準の厳格化
  • クレジットカード金利の引き上げ
  • リスク管理の強化
  • 貸倒引当金の積み増し

米消費者金融保護局(CFPB)は、延滞手数料(late fee)の上限引き下げ案を打ち出しており、家計負担の軽減を狙う一方で、カード会社のビジネスモデルやリスク管理に影響を与える可能性があります。延滞手数料の抑制は、短期的には利用者救済につながるものの、「ペナルティの弱体化がモラルハザードを生み、延滞を増やすのではないか」という金融業界からの懸念も出ています。


5. 米国のクレジットカード延滞率から日本が学べること

5.1 日本のカード・リボ利用と家計防衛の違い

日本と米国では、クレジットカードの利用環境が大きく異なります。

日本ではクレジットカード残高やリボ残高は増加傾向にあるものの、米国のように家計全体がカード依存で回っている構造ではありません。

日米のクレジットカード利用の違い

項目米国日本
カード依存度極めて高い比較的低い
リボ払い利用一般的限定的
延滞率高水準低水準
家計への影響大きい限定的

一方で、物価上昇と金利上昇の局面が続けば、「所得が伸びない層がカードやリボに頼る」という構図は、日本でも同様に起こり得ます。

米国の経験は、「一見健全に見える平均データの裏で、低所得層や若年層、maxed-out層にリスクが集中しやすい」ことを示しています。日本でも、平均的な延滞率だけで安心するのではなく、「所得階層別・年齢別・利用率別」にリスクを分解して見る視点が重要になります。

5.2 「延滞率が上がる局面」で個人が避けるべき3つの落とし穴

米国のデータから読み取れる「危ないパターン」は次の3つです。これらは日本の個人にも十分参考になる教訓です。

個人が避けるべき3つの落とし穴

1. 限度額ギリギリの利用(maxed-out)

限度額の90%以上を利用する層は、延滞残高の約3分の1を占める”リスク集中エリア”になっています。

  • チェックポイント:利用限度額の何%を常時使っているか
  • 推奨水準:利用率は30%以下に抑える
  • リスク:限度額に近づくほど延滞リスクが急上昇

2. 複数カードの多重債務化

household debt レポートでは、一部の層で複数のカード・ローンを使い分けることで、実態以上にリスクを抱え込んでいるケースが示唆されます。

  • チェックポイント:保有カード枚数とリボ残高の総額
  • 推奨対応:カードは2〜3枚程度に集約
  • リスク:返済管理が複雑化し、延滞リスクが高まる

3. 高金利リボへの安易な依存

高金利環境下では、リボ残高の繰り延べが雪だるま式に膨らみ、延滞→チャージオフにつながりやすいことが、米国の延滞・貸倒データから読み取れます。

  • チェックポイント:金利が上昇した場合の返済負担の変化
  • 推奨対応:リボ払いではなく一括払いを基本とする
  • リスク:高金利下では返済負担が急増

定期的にチェックすべき項目

  1. 利用限度額の何%を常時使っているのか
  2. カード枚数とリボ残高がどの程度か
  3. 金利が上昇した場合の返済負担はどう変わるか

5.3 投資家目線:クレジットカード延滞率と株式・不動産市場へのシグナル

投資家にとって、クレジットカード延滞率は「家計のストレス指標」として、以下のようなシグナルになり得ます。

延滞率が影響を与える可能性がある分野

1. 消費関連株(小売り・旅行・レジャー)

延滞率の上昇は、将来の消費鈍化リスクの早期警鐘となりうる。

  • 影響:個人消費の減速予測
  • 対象セクター:小売、レストラン、旅行、娯楽
  • 投資判断:慎重姿勢が必要

2. 金融株(カード会社・銀行)

延滞率・チャージオフ率の上昇は、貸倒損失増・与信引き締めによる収益圧迫要因となる。

  • 影響:貸倒損失の増加、収益性の低下
  • 対象セクター:銀行、カード会社、消費者金融
  • 投資判断:リスク管理能力の評価が重要

3. 不動産・REIT

家計ストレスの増加は、家賃支払い能力や商業施設の売上に影響し、間接的に不動産市場へ波及し得る。

  • 影響:家賃滞納リスク、商業施設の空室率上昇
  • 対象セクター:住宅REIT、商業REIT
  • 投資判断:テナントの質と収益安定性を重視

こうした点から、米国市場に投資する日本の投資家にとっても、クレジットカード延滞率は「雇用やインフレと並ぶ重要マクロ指標」としてウォッチする価値があります。


6. まとめ:米国の延滞率は「正常化」を超えつつあるのか

6.1 「コロナ前への回帰」なのか、それとも「構造的な悪化」なのかを整理

ここまで見てきた米国のクレジットカード延滞率について、最後に全体像を整理しましょう。

FRBのモデル分析によれば、クレジットカード延滞率の上昇は大部分が「パンデミック後の正常化+リスクの高い借り手への与信拡大+実質債務の増加」で説明可能であり、現時点では”モデル外の異常な悪化”とは言い切れないとされています。

延滞率上昇の要因分析

要因説明評価
正常化コロナ禍の異例の低水準からの回帰モデルで説明可能
与信拡大リスクの高い借り手への貸出増加モデルで説明可能
実質債務増加インフレ・高金利による負担増モデルで説明可能
構造的悪化特定層へのリスク集中看過できない

一方で、セントルイス連銀やStatistaのデータが示す通り、延滞率は2008年金融危機時に近づきつつあり、延滞者の割合は当時を上回っている点は看過できません。

加えて、低所得層・若年層・maxed-out層といった特定のセグメントにリスクが集中していることから、「平均的にはまだ耐えているが、脆弱な層ではすでに限界が見え始めている」段階とも解釈できます。

現状の評価

  • ✓ 一部は「正常化」として説明可能
  • ✓ ただし、2008年危機時に接近している指標も
  • ✓ 特定層へのリスク集中が顕著
  • ✓ 雇用環境は当時より堅調
  • ✓ 直ちにシステミック危機とは言えない
  • ⚠️ ただし、今後の推移には警戒が必要

6.2 今後フォローすべき指標(連銀統計・民間統計)

米国のクレジットカード延滞率と家計ストレスをウォッチするには、次のような情報源が有用です。

主要な情報源とその特徴

情報源内容更新頻度
ニューヨーク連銀「Household Debt and Credit Report」家計債務・延滞の包括データ四半期ごと
セントルイス連銀「On the Economy」ブログ所得階層別・地域別の延滞分析不定期
FRB「FEDS Notes」延滞率上昇がモデル範囲内かの分析不定期
FICO・Equifax業界レポートカード・オートローンの延滞・チャージオフの現場感月次・四半期

これらを継続的にチェックすることで、「米国のクレジットカード延滞率が本当に過去最高圏を突破し、”危機モード”に入るのか、それとも高止まりしつつ落ち着いていくのか」を見極めることができます。


よくある質問(FAQ)

Q1: 日本でも米国と同じように延滞率が上がる可能性はありますか?

日本では米国ほどクレジットカード依存度が高くないため、同じ規模での延滞率上昇は考えにくいです。ただし、物価上昇と金利上昇が続く局面では、低所得層や若年層を中心に延滞リスクが高まる可能性はあります。

Q2: クレジットカードの延滞率が上がると、一般消費者にどんな影響がありますか?

延滞率の上昇により、カード会社は与信基準を厳格化したり、金利を引き上げたりする可能性があります。また、延滞が増えると新規カード発行が難しくなる層も出てきます。

Q3: 投資家として延滞率のどの指標を見るべきですか?

  • FRB統計の残高ベース延滞率(全体トレンド把握)
  • ニューヨーク連銀の延滞遷移率(先行指標)
  • 所得階層別・年齢別の延滞率(リスク集中の把握)

これらを総合的に見ることで、景気や金融システムへの影響を判断できます。


最後に:クレジットカードは便利だが計画的な利用が重要

クレジットカードは非常に便利な決済ツールですが、米国の延滞率上昇が示すように、計画的な利用が重要です。

クレジットカード利用の基本原則

  1. 利用限度額の管理:自分で上限を設定し、30%以下の利用率を維持
  2. 一括払いを基本:リボ払いは緊急時のみとする
  3. 定期的な確認:利用明細を毎月チェックし、不正利用がないか確認
  4. カード枚数の適正化:管理可能な2〜3枚程度に集約

米国のクレジットカード延滞率上昇は、私たち日本の消費者にとっても他人事ではありません。この記事で紹介した情報を参考に、賢いクレジットカード利用を心がけ、健全な家計管理を実践していきましょう。

また、投資家の方は、米国の延滞率を重要なマクロ指標の一つとして継続的にウォッチすることで、より的確な投資判断ができるようになるはずです。